目次
■今回の教育視察はプレスクール(保育園)と小学2年生の動く授業
2019年5月教育視察対象
①小学校入学前に就学支援目的で始まる義務教育として保育園での取り組み
②小学2年生のアクティブラーニング授業
動く授業スタイル
■視察の背景
教育先進国であるフィンランドは教育システムとして自治体立の保育園(プレスクール)から義務教育が始まります。
その目的は日本でいう年長さんとして1年間、小学校への移行期をつくり、子どもにストレスがかからないように先生方が取り組んでいます。
日本では保育園、幼稚園と小学校へのつながりがなく、「小1の壁」という表現もあるように子どもたちも保護者も不安を抱えたりストレスを感じるケースが多いようです。
「学校に行きたくない」と言い出すお子さんも多いのが現状です。
「森の幼稚園」や海外から新しい方法での保育、知育を取り入れた自主性を発揮できる環境づくりをしている幼稚園、保育園が増えています。それは素晴らしい取り組みなのですが、小学校に入学すると集団行動やお行儀を課せらることになるので
すぐに馴染めない子どもが出てきます。
日本の学校の先生方は業務が多く多忙で、新任の先生を指導するゆとりもなくなっています。集団行動ができないため発達障害を疑ったり、どのように子どもに向き合っていけばいいのかわからず、つい厳しい口調で子どもたちをコントロールしようとしてしまいます。
■保育園から始まる自主性の伸ばし方「ルールは子どもと決める」
日本では学校や家庭でのルールは大人が決めます。そのルールそのものもなぜ、そうしなかればいけないのか、背景や本質を考える機会はあまりなく、伝統や上の考えで、ということも多いのではないでしょうか。
子どもたちは、背景にある理由を説明されることもなく「いいから、そうしなさい!」と押し付けられるのです。
「ダメなものはダメなんだ、」という伝統文化が日本にはあります。
フィンランドでは子どもの人権を重要視していること、子どもの自主性、自立を伸ばすことを教育の目標に掲げていることから子どに一方的にルールを押し付けることはしていません。
子どもわかるように説明して社会のルールを理解させたり、クラスでのルールは一緒に決めているそうです。
学校やクラスにはいろいろなルールがあります。たとえば、授業中に発言する時は静かに手を挙げるというルールがあります。日本のように「ハイ、ハイ!」と声を出さないことになっています。先生にその理由を聞いてみると「そのほうが静かに授業を進められるでしょ?」
先生にとっても子どもたちにとってもより良い学びの環境をつくることを常に考え、現場主体で改革を行っています。
小学校に入学してくる子どもたちはすでに発言の仕方を身に着けてきます。義務教育が始まるプレスクール(保育園)でそのルールをしっかり理解し、できるようになっているのです。
今回の視察でも保育園(年長)の子どもたちが静かに座っていて、発言する時は手を挙げていました。
それに発言する子どもが評価される、ということではないそうです。発言することはいいことですが、考えているのならばそれも大切なプロセスだとおっしゃっていました。
そしてルールの説明をし、子どもたちが自分で納得したら書類にサインをしてもらいます。
とはいえ、子どもですから、すぐにできるようになるわけではありません。
だから何度も繰り返し、確認します。「何か言いたい時はどうするんだっけ?」
そしてできたら「そうそう、できてるわね。」と認める言葉かけをします。ほめるのではなく、認めるだけです。
■子どもの感情を自覚させるアプローチ
今回、保育園の先生へのインタビューで印象に残ったのは「感情」にアプローチすることの重要性でした。
自分が今「楽しい」のか「悲しい」のか「勇気がある」「辛い」のかそれをしっかり自覚し、言語化できるようにすることが生涯のパーソナリティや学校内での子ども同士のコミュニケーションにもプラスの効果が出るということです。民間で開発した教材もあるので今少しずつ使っています。と先生がおっしゃっていました。
子どもたちは思い通りにいかないことを言葉にできない時、泣き叫んだり、モノを投げたりという行動を起こします。その背景にある感情を自覚させることを重要視しています。
まずは自分の感情を認識できるように周囲の大人が支援する必要があるということは、ネウボラ研修でも取り上げられていました。
ネウボラ制度とはフィンランドで行われている子育て支援制度です。妊娠時に健診を受診しその後6才になるまで一つのファミリーに1人のネウボラ保健師さんが担当します。医療面やお母さんの心のケア、周辺家族との関係も含め継続的に支援が行われる素晴らしい制度です。
■子ども主体のアクティブラーニング授業「動く授業」
今回はいつもお世話になっている基礎学校(小中一貫校)で小学2年生の授業を視察しました。
教育先進国であるフィンランドではすでに多くの授業がアクティブラーニングスタイルで行われています。日本ではアクティブラーニングを「主体的、対話的、深い学び」という表現にしていますが、2020年の学習指導要領改訂で本格的に取り入れられることになっています。
AI化など時代変革が進む中、求められるチカラは知識詰め込み教育では得られなくなっています。自分で考え、その考えを周囲と対話しながら結果を出していくことが社会で求められるチカラなのです。
教育国家であるフィンランドは日本と違い、先生の自由裁量権があり、教科書検定もなくしたので授業の内容は先生が工夫して組み立てています。
小学生の6年間はクラス替えをしないで、クラス担任が個々のレベルを確認しながら落ちおぼれが出ないように指導していきます。
子どもたちが「学ぶことが楽しい」という感覚を持てるように日々新しい情報を集めたり先生同士も教え方を学んでいるそうです。学校内はもちろん、他校の先生や海外の教育も参考にし、コミュニケーションを積極的に取り合ってより良い授業を提供しています。
視察テーマは動く授業。低学年の子どもたちはじっと座ったまま集中力が維持できるのはせいぜい15分程度です。大人でも座っていることが健康に良くないこととも言われています。
今回は国語の授業です。
まずは動画=You tubeを活用し、子ども向けの身体を動かすダンスから授業が始まりました。ネコがダンスをしている楽しい動画です。身体を動かすことによって脳が活性化され、学びの質も高まることがわかっているからです。
その後、事前に先生が廊下に仕掛けたカードがあるからそれをまず取りに行ってくるように伝えます。
そのカードには5W WHEN WHO WHAT WHERE WHY が書かれています。
それを各自ピックアップしたら個々がそれを組み合わせて文章を作っていました。ゲームのように楽しみながら飽きることなくいつの間にか文章ができていくのです。
■子どものためだけでなく、教師や保護者のために最善の方法を考える
子どもたちのための教育、子育てなのですが子ども中心社会ではありません。指導者、保護者にとっても
よりよい方法を考えることを大切にしています。
たとえば、保育園の年長さんのクラスではテーブルやいすは大人にも対応できる高さになっています。それは先生方が腰をかがめて子どもと目線を合わさなくてもいいようにしている、ということです。
子どもにすべてを合わせる、ということでないことがわかります。
このことは一つの例ですが、フィンランドでは教育、子育てについてより良い方法を考え、対話しながら改善点を見つけていくことをしています。
社会全体としての取り組みもそうですが、家庭でもどうしたらうまくいくのか、を考えていくことはできますよね。それはフィンランドだけでなく、日本でもできることではないでしょうか。